あれから十年余・・・私のこころの遍歴・・・
<私達の社会、特に九条そして核エネルギー>その(9)
核エネルギーをもう一度考えよう。
狭い国土を保有する日本が、広大な地域を不毛化させ、15,000人もの人命を失い、人類史上類例のない被害を経験したわけです。「絶対にこのようなことが、二度と繰り返えされてはならない」思うのはまさしく当然のことでしょう。これは、情緒的、心情的、エモーショナルな絶叫です。しかし、日本人はこの思いを完全共有していません。日本は核エネルギーを100%放棄できないと、考えている人は多数います。
核エネルギーを完全放棄した場合の、(負)要素つまり、ネガティブ・リストを考察してみましょう。いやそれは全く不要だ、ただひたすら廃止する以外ない!…では問題は絶対解決しません。以下そのネガティブ項目です。
a)3.11福島災害以来、日本の原発を停止して以来、電気料金を値上げしても、各電力会社の営業成績は赤字化した。高額な化石燃料を輸入せざるを得ないからです。原発を稼働しない現状が続くかぎり、安定した電力の供給は確保できないかもしれない。日本の工業生産に支障をきたす可能性あり。
b)その結果、日本の産業は安い潤沢な外国での電力を求めて、生産を外国に移転する可能性。全体的失業率の低下の可能性。燃料価格暴騰とあわせ、失業率低下により、現在維持している有数の工業国としての生活レベルを下げざるを得ない可能性…ないとは言えない。
c)日本が核エネルギーを完全奉仕しても、諸外国は、安全性の低い、核エネルギーを稼働続行・拡大し、万一事故発生時の被害は日本も同じく受ける。
d)核エネルギーを放棄し、化石燃料への依存度を高めると、その分だけ温室ガスの排出は増大し、大気汚染を促進する。現に日本は化石燃料使用増加のため、京都プロトコールを守れないワースト国に一つに数えられている。
e)天然資源燃料が有限なのは疑いない。再生エネルギー(風力、水力、地下エネルギー、ソラー・エネルギーの開発も進むだろうが、時期的に間に合うという確証から、現在は程遠い。
勿論このネガティブ・リストに記したシナリオが実際に全て発生するとは言えません。しかし、十分想定しなければなりません。核エネルギー放棄の(正)要素のみを見て、このような(負)ネガティブ要素を顧みないのは、正当な議論で派内ばかりでなく、極めて危険です。
実は不特定多数の日本人が危惧しているのは、これらの問題が現実に起きるかもしれない、起きたらどぅしたらいいのだろうと、迷いあぐねているからです。いや、例え、そのために、現在享受している快適な生活を放棄し、生活水準を、50年前に、いや100年前に戻しても、核エネを放棄すべきだ…というのであれば、それはそれで立派な結論です。
21世紀現在、我々が維持している生活レベルを維持したまま、核エネは完全放棄すべきだ、いやそれは我々の責任外の分野だ、我々は考えなくてもいいのだ…と主張するとすれば、それら責任ある市民とは言えないでしょう。
さてさて、以上が10年余前に「九条の会すずか」に加入して以来の、現在の私の心境の変遷と、心境そのものです。なんだお前、自分自身のこれらの問題について何も言っていないではないか…と言われるかもしれません。「私の意見はこうこうです。どうぞ皆さん同調してください」と言うのがこの文の目的ではありません。いろいろ有識者の意見をきき、情報をお集めください。しかし、最終的にこれらの件について結論を下すのは、お読みいただいた皆さん個人です。そしてそれにしたがって行動してください。
最後までお読みいただいた皆さん、ありがとうございました。(重田)
Source: 九条の会すずか