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2006年01月24日

ライブドア問題と日本国憲法

 20日より国会がはじまり、小泉首相の所信表明演説では改憲の問題で確実に一歩前に踏み出した発言をおこなうなど、改憲をめぐる問題はいよいよ切迫して来ました。
 にも関わらず、世間の関心は―と言うより、マスコミの関心は―マンション耐震偽装問題やライブドア問題など経済問題一色という状況ですね。もちろん、大事な問題ですから、きっちりと報道で真実を明らかにしていただきたいとは思います。しかし憲法問題を無視してよい理由にはならないはず。

 ということで、今回は日本国憲法を通じてライブドア問題など経済問題について考える試みをしてみたいと思います。

 今回も長文だから、続きを読む前に応援お願い!⇒

 私は経済の問題を考えるときにも、日本国憲法は一つの指針になると考えています。

[現行憲法]
 第29条【財産権】 
 財産権は、これを侵してはならない。
 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

 第22条【居住・移転・職業選択の自由】
 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

 日本国憲法は、ある特定の経済の体制を前提とした法律にはなっていません。現行憲法のままでも、もっと自由主義的な資本主義になることも、社民主義的な福祉優先の資本主義になることも、中国のような一国二制度になることも、可能といえば可能な条文になっています。
 ただ、私有財産を守り増やす権利の内容も、そのための職業選択の自由についても、まるっきり無制限に認められるものでは無いということについて、ちゃんと釘をさせるようにだけはなっています。それが、青字で書かれている「公共の福祉に適合する」「公共の福祉に反しない」という文です。

 「公共の福祉に反しない」とは、「他人の基本的人権を侵害しない」と読み替えることができます。つまり、憲法が保障した基本的人権を制限できるのは、やはり憲法が保障している自分以外の他人の基本的人権だけであるという意味です。

 さて、このことを踏まえて、マンション耐震偽装問題やライブドア問題を考えてみるとどうでしょう。「安全対策はコストがかさむ、コストを削らなくては利益を最大化できない」「法律さえ守っていれば、儲けるために何をやっても良い」という主張に対して、日本国憲法は「マンション購入者や一般株主の『基本的人権』を踏みにじってまで儲けても良いとは言ってませんよ」とハッキリ釘を刺してくれているのです。

 ですから、財産や商取引に関する法律は、この憲法の精神にのっとって、個々人の間で「財産権」をめぐった争いが起きた際に、それを調整するべく公正・中立な取引として円滑に進められるように(さまざまな不備や抜け道が現時点であったとしても)整備されているわけです。
 やはりどんな問題が起こったときでも、日本国憲法は物事を考える上で基本となる視点を与えてくれるているものです。

 ではここで、この第22条・第29条について、自民党の憲法草案ではどうなっているかを見てみましょう、、、

 [自民党憲法草案]
 22条 何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
 29条 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。

 ハイ!しっかり、「改悪」されていますね。
 自民党案は実に細かいところまで、よくぞ気配りをしてくれているものです。

 22条では、他人の人権を侵害する職業をなりわいにすることも「職業選択の自由」と認められるように「自由が拡大」されています。
 29条では、財産権の内容を「公共の福祉に適合(=個々の基本的人権同士の調整)」をすると定めた内容から「公益・公の秩序(=社会の利益や秩序)」を優先する内容へと置きかえています。

 これでは、消費者・投資家を騙すような職業につくことも「自由」ですし、問題が起こったときには、個人の救済よりも社会全体のシステムを守ることのほうが優先されることになります。また、ライブドアのような「他人のお金」で「他人のつくった会社」を「買収しては転売するだけ」の会社で、買収される会社やそこで働く労働者、またリスクを背負わされる個人投資家にとっては、まったくはた迷惑な会社であったとしても、経済全体が発展しているあいだはそのことが憲法上も許されるということになってしまうわけです。

 それにしても「自民党改憲草案」は、現行憲法の値打ちある部分を再認識するための「対象物」としてはなかなか良い教材です。
 「現行憲法のどの部分が変えられようとしているか?」
 「なぜ自民党案はそのような変更をしようとしているか?」
 この二つの視点で、もう一度憲法の条文を並べただけの「keep9」のエントリーを読み比べて見ることを、皆さんにお薦めしたいと思います。

 ということで今日はここまで!

 最後まで読んでくれてありがと!応援まだの人はこちらをよろしく!⇒

投稿者 Mr.K : 2006年01月24日 11:45

コメント

はじめてきました。

ライブドアのことでいろいろ見ていたのですが・・・。この記事は面白かったです!

憲法のことでこんなブログがあるんですね。
小学校のときに、前文を覚えさせられた記憶があります。それ以来ですね、憲法の文章に触れたのは。

「公共の福祉」って良く分からなかったんですが、この記事を拝見してなんとなく分かりました。先生も多分、そう言うふうに教えてくれていたんだろうけど、小学生には分からなかったのかも。

それにしても、どうして中学や高校では憲法やらないんでしょうね。国の基本法なんですよね?不思議です。

また、遊びに来ます。

投稿者 通行人 : 2006年01月24日 16:16

初めまして。憲法改正は9条だけを私は問題にしていたけれど各党で提案する9条以外の細かな条例にも目を配らなければならないということにショックを受けました。すると、憲法を細部に亘って学習する必要がありますね。こりゃあ大変なこっちゃというのが実感です。ブログを始めたばかりですが憲法問題に関心を寄せ反対意思を表明する人がたくさん居られる事に意を強くしました。それにしても、「戦後でなく既に戦前」と言う状態に今の日本が置かれている事に憂いを感ぜざるをえません。新たに目を開かして頂きました。ありがとう。

投稿者 yaeko : 2006年01月26日 10:48

>通行人さん

 ライブドア問題に限らず、いろんな問題で「日本国憲法ならこう考える」を考察するのは、ためになります。なんと言ってもブレ無い。
 そんな大事な憲法を学べない「学校」って、いったいなんなんでしょうね?

>yaekoさん
 憲法改正でやっぱり一番の焦点は9条です。
 9条をトコトン深めるのも、憲法について学ぶ一つのアプローチ方法として良いと思います。だから、あまり大袈裟に考える必要ないですよ。
 この”keep9”には「新たに目を開かして」くれる記事が連日のようにトラックバックされていますので、これからもMr.Kともどもよろしくお願いします。m(_ _)m

投稿者 Mr.K : 2006年01月27日 01:23

Mr.Kさんおはようございます。
初めて、ブロガーズ・リンクの方からコメントいただきました。ありがとうございます。
ほんと自民党の図々しい憲法改悪草案って感じですね。知れば知るほど頭に来ます。
私は、このブログを始める前は、ど素人で憲法と言っても、前文と、9条ぐらいしか知らなかったのですが。読めば読むほど愛着が増し、
日本が世界に誇れるものが、有ったと感じました。この大切な憲法をなんとか、次の世代に残すことが、今の大人たちの使命だと思い書いています。地味で面白くないかもしれませんが、これからも、お願い致します。

また今回のこの記事も、面白く拝見させていただきました。これからも頑張ってください。

投稿者 かぜ : 2006年01月28日 09:12